外科

小児外科

小児外科とは15歳以下の新生児・乳幼児・学童・思春期のこどもに対する手術を含めた外科的治療を専門とし、新生児外科・肝胆道疾患・消化管疾患・呼吸器疾患・泌尿器疾患・小児腫瘍などを対象に、心臓血管・脳神経・整形外科疾患などを除いた外科的疾患の幅広い分野を扱う特殊診療科です。なお、もともと小児外科で治療を受けられた方や疾患自体が小児外科疾患の性格を有する場合は、16歳以上でも診療の対象となります。

当診療科入り口、外科外来です。

当診療科の対象疾患

当診療科は、愛媛県における小児外科診療の基幹病院として、小児外科専門医が常勤している小児外科学会認定施設であり、外科的疾患を有する小児の患者さんを、急患も含めて、広く積極的に受け入れています。
当科で診療を行っている主な疾患を以下に示します。

1.頭頸部:副耳、耳前瘻、頸部腫瘤、正中頚嚢胞(瘻)、側頚嚢胞(瘻)、頚部化膿性リンパ節炎、異物誤嚥・誤飲など

2.胸部:気胸、肺嚢胞性疾患、肺分画症、縦隔腫瘍、漏斗胸など

3.腹壁:鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、臍帯ヘルニア、腹壁破裂、総排泄腔外反症、臍肉芽腫など

4.消化管:先天性食道閉鎖症、先天性食道狭窄症、食道アカラシア、突発性胃破裂・穿孔、胃軸捻転症、肥厚性幽門狭窄症、先天性十二指腸閉鎖・狭窄症、先天性小腸閉鎖・狭窄症、腸回転異常症・腸軸捻転症、急性・慢性虫垂炎、腸重積症、壊死性腸炎、特発性腸穿孔、胎便性腹膜炎、臍腸管遺残症(臍腸管瘻・臍洞、メッケル憩室)、尿膜管遺残症(尿膜管瘻・臍瘻、膀胱憩室)、先天性結腸閉鎖・狭窄症、消化管ポリープ、消化管重複症、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)、ヒルシュスプルング病、慢性便秘症、鎖肛(直腸肛門奇形)、直腸・肛門脱、痔瘻、肛門周囲膿瘍、裂肛、消化管異物など

5.肝胆膵脾:胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、膵・管胆道合流異常症、門脈圧亢進症、肝腫瘍、膵腫瘍、脾腫、脾嚢胞など

6.泌尿生殖器:停留精巣、精巣捻転、精索水腫・陰嚢水腫、包茎、先天性水腎症、水尿管症、膀胱尿管逆流症、卵巣嚢腫、水子宮腟症など

7.腫瘍:神経芽腫、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)、肝芽腫、奇形腫、横紋筋肉腫、リンパ管腫、血管腫、類比嚢腫、精巣腫瘍など

8.その他:胸部・腹部外傷、腹腔内出血など

(各小児外科疾患に関する詳しい説明については、日本小児外科学会のホームページの中の『小児外科で治療する病気』http://www.jsps.gr.jp/english/general/diseaseも参照ください。)

最近の話題など

小児のからだは、単に大人を小さくしただけでなく、身体機能・生活習慣・疾患の種類が大人とは大きく異なるのみならず、あらゆる臓器が未熟であり、このような小児の特徴を充分に理解した上で手術を含めた治療を行うことが必要です。また、小児のからだは大人に比べて小さくてしかも弱いため、特に新生児・未熟児では繊細な手術テクニックが要求されます。そして小児では手術後の経過が一生を通して長いため、手術後の成長・発達を妨げず、機能を重視した手術・治療がより重要となります。
 そのため当科では、体への負担が少ない外科的治療法とされる内視鏡外科手術を、あらゆる臓器が未熟な小児にこそ最も適した手術法であると考え、小児に対して積極的に導入しており、現在では小児外科の手術件数のうち内視鏡外科手術の占める割合は約60%となっています。
 また開胸・開腹手術においても、胸壁や腹壁が軟らかい新生児や乳幼児では、手術の傷痕が目立ちにくいよう腋窩(脇の下)や臍周囲での切開で従来と同様の手術を行う事により、傷痕で悩んだりいじめたりする事が出来るだけないように配慮しています。
 さらに、臍ヘルニア、肥厚性幽門狭窄症、肛門周囲膿瘍などの疾患では、手術と同等に有効な圧迫療法や薬物療法も取り入れており、手術や入院に伴うご本人・ご家族の負担軽減を図っています。
 こどもについての専門的な知識を持った外科医、それが小児外科医であり、日本の将来を担うこどもたちの生命を守り、健やかな発育・成長・発達を手助けするために、誇りと情熱をもって、きめ細やかな医療を続けて行きたいと考えています。

診療のトピックス -小児内視鏡外科手術について-

1) 小児鼠径ヘルニアの鏡視下手術(LPEC法)
 小児鼠径ヘルニアの内視鏡外科手術の一つである腹腔鏡下経皮的腹膜外閉鎖法(LPEC法)は、1995年に徳島大学小児外科・小児内視鏡外科で考案された新しい手術法で、現在では全国の多くの小児外科専門施設で行われています。手技は、臍のしわに沿った小さめの傷から内視鏡をおなかの中に挿入し、炭酸ガスによる気腹(おなかの中に注入して膨らませる)を行った上で、鼠径部の体表から専用の針(ラパヘルクロージャー針)を用いてヘルニア嚢(内臓が出入りする腹膜の袋)の入り口の全周に糸を通し、結紮(縛る)を行う手術です。

 LPEC法の利点は、
(1)鼠径部の傷が極めて小さく、臍の傷も目立たないため、美容的に優れています。
(2)反対側の鼠径ヘルニアの有無も同時に確認でき、もしあれば一度に手術することができます。
(3)臍ヘルニアがある場合は、そちらの手術も同時に、かつ傷痕を増やすことなく行うことができます。なお、この手術は、通常は手術操作のために下腹部の別の傷から鉗子(手術器械)を使用して行われますが、当科では鉗子付の内視鏡を使用する事により下腹部への傷なしで同じ手術を行っており、さらに美容的に優れているため、特に女の子の患者さんには好評です。


2) 漏斗胸に対する胸腔鏡補助下胸骨挙上術(Nuss法)
 前胸壁の下部を中心に胸郭が陥凹した変形を漏斗胸といいます。
漏斗胸の手術は、成人では多くの場合、見た目をよくする美容形成的な目的で行われます。しかし小児では、単に見た目を良くするだけの手術ではなく、そのお子さんが一生涯にわたって感じる引け目やコンプレックスなどからの解放という心理・情緒面の改善のための手術でもあります。 Nuss法は1997年に米国Donald Nuss医師により考案された手術方法で、陥凹している胸骨の裏側に金属製のバーを入れ、裏側から前方へと胸骨を押しだして矯正する方法で、当科では肺や心臓など胸の中の臓器を傷つけないために胸腔鏡ガイド下に行っています。従来の手術と違い、両脇に2cmほどの傷痕がつくだけで、胸の真ん中には傷痕がなく、美容的にも優れているだけでなく、一般に手術時間が短く、出血量や手術後の痛みも少ないというメリットがありますが、バーを約2年間留置した後もう一度そのバーを抜き取る手術が必要となります。

3)胃食道逆流症(GERD)に対する腹腔鏡下噴門形成術
 胃食道逆流症は、胃の入り口である噴門の機能不全のために、胃の内容が頻回に食道に逆流することにより、(1)栄養障害:体重増加不良・貧血・低蛋白血症、(2)呼吸器症状:肺炎・咳嗽発作・無呼吸発作など、(3)消化器症状:嘔吐・吐血・逆流性食道炎、などを来す病態です。胃食道逆流症は単独で生じる以外に、食道裂孔ヘルニアに伴う場合や先天性食道閉鎖症や先天性横隔膜ヘルニアの術後に合併して発症する場合があります。また最近では重症心身障害児に発症する胃食道逆流症が注目されており、その原因は重症心身障害児に特有の筋肉の緊張や脊椎の変形(側彎)、腹圧の上昇、慢性的な呼吸障害、食道裂孔ヘルニアの合併などが考えられています。
胃食道逆流症に対して当科では、傷が小さく手術後の痛みが少ないため、手術後の回復が早い「腹腔鏡下噴門形成術」を行っており、重症心身障害児では栄養剤注入ための胃瘻の造設も併せて行う場合があります。

4)ヒルシュスプルング病に対する腹腔鏡補助下(もしくは経肛門的)根治術(endorectal pull-through 法)
 ヒルシュスプルング病は、本来は腸に備わっていてその動きを制御する働きを持つ神経節細胞が肛門からある程度の範囲の腸で生まれつき無いために、重度の便秘や腸閉塞を起こす病気です。神経節細胞が無い部分の腸の範囲によって重症度が違いますが、治療は原則として手術が必要であり、神経節細胞の無い腸を切除(切り取る)した上で、神経節細胞のある正常な部位の腸を引き下ろして肛門と吻合(つなげる)することが根治術の基本です。そのため、肛門からの腸内洗浄で便を洗い流すことが困難な場合は、新生児期に人口肛門を造り、体重がふえてから、腹腔鏡を用いて腸の血管を処理した上で肛門外で腸を切除、吻合する腹腔鏡補助下根治術を行いますが、腸内洗浄で便が洗い出せる場合は人工肛門を造らずに、体重が増えてから、腹腔鏡補助下根治術(神経節細胞の無い範囲が長い場合)やすべての手術を肛門から行う方法(経肛門的根治術)を行ったいます、この術式は、従来の開腹術に比べておなかの傷痕が目立たない(あるいは残らない)事や手術後の腸の癒着による障害が起こりにくい事などの利点の他に、手術後の長期的な排便機能が良好な事も大きな利点です。

5)高位鎖肛(直腸肛門奇形)に対する腹腔鏡(補助)下根治術
 胎児期に肛門の形成が障害されたために正常な肛門がない病気を「鎖肛」といいますが、この病気は肛門がないだけでなく、男児の場合は尿道(膀胱から先のおしっこの通り道)や皮膚に、女児の場合は膣や皮膚に瘻孔(細いつながり)が出来ている場合も多く、最近では「直腸肛門奇形」とも呼ばれています。正常な肛門がないために排便が全く出来ないので、直腸の先端部分を本来肛門が出来ていたはずの場所まで引き降ろして皮膚に縫い付けて新たな肛門を作る根治手術が必要です。しかし、手術の時に肛門を締めておくための筋肉の中をきちんと通して直腸を引き降ろさないと、手術後に便がずっと垂れ流しになってしまうため、直腸先端がすでに恥骨直腸筋(肛門を締めておく上で最も重要な筋肉)を通過して皮膚の近くまで来ている「低位鎖肛」では生まれてすぐの根治手術が可能ですが、恥骨直腸筋を全く通過していない「高位鎖肛」や途中までしか通過していない「中間位鎖肛」では、体が小さい新生児期の手術が非常に難しいため、生まれてすぐに人工肛門を造って、体重が増えてからの根治手術となります。そのうち「高位鎖肛」では、おなかの中で直腸と周囲組織との癒着(くっつき)を剥離(はがす)したり、瘻孔を切り離したりする手術操作必要があり、以前は開腹手術が行われていましたが、最近ではその手術操作を腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡手術では、きずが目立たないだけでなく、肉眼より拡大して見る事が出来るためより精度の高い手術操作が可能であり、手術後の排便機能が開腹手術より良好である事も大きな利点です。

6)その他,当科で行っている鏡視下手術の適応となる代表疾患
・胸部疾患:気胸、肺嚢胞性疾患、肺分画症、縦隔腫瘍・肺腫瘍、乳幼児横隔膜ヘルニア・横隔膜弛緩症
・腹部疾患:急性虫垂炎(盲腸)、メッケル憩室、停留精巣(腹腔内精巣)、卵巣嚢腫・腫瘍、その他の腹部腫瘤・腫瘍などがあります。

 上記 1)~5)の手術法については「消化管・腫瘍外科学ウェブサイト(診療案内-小児外科)」にて図、写真を添付しておりますが、手術画像等含まれますので、医療関係者以外の方でご覧になりたい方は、ご自分の責任の元での閲覧をお願い致します。
又、小児の内視鏡外科手術について、ご質問などがございましたら、当院の消化器腫瘍外科医局(☎089-960-5975)までお問い合わせください。

外来診療予定表(五十音順)

備考
竜田 恭介
山田 耕治
竜田 恭介
山田 耕治
消化器腫瘍外科

専門分野(五十音順)

竜田 恭介
山田 耕治 小児消化器外科全般、小児内視鏡外科、小児一般外科  キーワード:小児外科 内視鏡外科手術 小児難病 新生児 (日本外科学会認定医・専門医、日本小児外科学会小児外科専門医)